2026年は、午(うま)年です。
「干支」の十二支(じゅうにし)は古来より、日本の歳時や神道の信仰と響き合いながら、暮らしの節目に息づいてきました。年の瀬や新年、干支の置物や絵馬などを目にすることは、過ぎゆく時を振り返り、来る年に思いを馳せる静かな営みです。今回は、十二支の由来と象徴、そして神道や暮らしとの関わりをたどります。
干支の十二支。暦に息づく十二の象徴

干支のはじまりは、古代中国に起源をもつ暦法が日本に伝わったのち、年や季節の巡りを示す指標として定着しました。正月や初詣、年賀状など、暮らしの節目に自然と意識されるようになりました。
干支の十二支は、「子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥」の十二の動物で構成され、それぞれに自然の力や人の営みに通じる象徴的な意味が重ねられています。農耕の時代には、季節や方角を知る目安として用いられ、暮らしや仕事のリズムを整える役割を果たしてきました。
また、干支の動物は神様そのものではありませんが、人々の信仰や歳時と結びつき、生活文化の中に静かに息づいてきました。
十二支と象徴・性格
| 十二支 | 動物 | 象徴・性格 |
|---|---|---|
| 子(ね) | ねずみ | 知恵・繁栄・機転 |
| 丑(うし) | うし | 忍耐・勤勉・誠実 |
| 寅(とら) | とら | 勇気・力・威厳 |
| 卯(う) | うさぎ | 穏やか・調和・跳躍力 |
| 辰(たつ) | 竜 | 発展・神秘・吉兆 |
| 巳(み) | へび | 知恵・再生・変化 |
| 午(うま) | うま | 活発・自由・成長 |
| 未(ひつじ) | ひつじ | 温厚・思いやり・平和 |
| 申(さる) | さる | 器用・知恵・機知 |
| 酉(とり) | とり | 規律・実り・時間 |
| 戌(いぬ) | いぬ | 忠誠・守護・番犬 |
| 亥(い) | いのしし | 決断・ |
十二支の物語と暮らし・自然との結びつき
| 十二支 | 物語(伝説・昔話) | 暮らし・自然との結びつき |
|---|---|---|
| 子(ね) | 鼠は機転を利かせ、牛の背に乗って干支の先頭を勝ち取った | 農作物を守る小動物として親しまれる |
| 丑(うし) | 忍耐強い牛は、鼠に先導されながらゆっくりと順番を守った | 農耕の象徴、田畑を耕す力強さ |
| 寅(とら) | 山の王として威厳を示す虎は、他の動物たちから尊敬を集めた | 山や森の王者、自然の強さの象徴 |
| 卯(う) | 月の光に照らされ跳ねる兎は、平和と多産の象徴とされた | 月の満ち欠けや季節の移ろいの象徴 |
| 辰(たつ) | 竜は天に昇り、雨や水を司り、人々に豊穣と幸運をもたらした | 水や雨、豊穣・発展の象徴 |
| 巳(み) | へびは古い皮を脱ぎ捨て、知恵と再生の象徴となった | 農作物の守り神、土地の精霊とも結びつく |
| 午(うま) | 馬は野を駆け抜け、旅や開拓を助ける力強い仲間として人々に親しまれた | 移動・輸送・開拓に欠かせない動物 |
| 未(ひつじ) | 羊はおとなしく温厚で、平和と調和を象徴した | 羊毛や食材として暮らしに利用される |
| 申(さる) | 猿は賢く器用で、農作物を守る知恵を人々に授けた | 果実や田畑に関わる自然の動物 |
| 酉(とり) | 鶏は夜明けを告げ、時の守護者として実りをもたらした | 太陽の運行や季節の目安として親しまれる |
| 戌(いぬ) | 犬は家や人を守り、忠誠心と守護の象徴とされた | 家畜や番犬として暮らしに密接 |
| 亥(い) | 猪は勇猛に突き進み、決断力と前進の象徴となった | 山林や狩猟文化と結びつき、自然の力の象徴 |
「十二支の物語」は、単に干支の順番を示すだけでなく、各動物にまつわる寓話や民話を通して、その性格や象徴を伝えます。自然や農耕、日々の暮らしの知恵や生き方の指針として、人々に語り継がれてきたのです。
なぜ十二支に猫がいないの

人間の暮らしに身近な「猫」は、なぜ十二支に含まれないのでしょうか。伝説によれば、猫は鼠にだまされて干支の順番を逃してしまったため、十二支には入れなかったといわれます。この話は、猫と鼠の関係や民間の知恵を反映したユーモラスな説話として伝えられています。
また、たくさんの動物が出てくる「星座(Zodiac)」は西洋占星術に基づき、誕生日や天体の位置で性格を占うものです。干支と星座は混同されやすいですが別物です。起源も目的も異なることを知ると、文化の違いをより面白く感じられます。
神道の自然観と十二支

十二支は、もとより神道固有の教えとして生まれたものではなく、暦法として伝えられた思想に端を発します。しかし日本においては、十二支は森羅万象の営みを映す象徴でもあり、自然の巡りや時の移ろいを尊ぶ神道の自然観と響き合い、年中行事や信仰のかたちの中に受け入れられてきました。
新しい年を神前で迎え、その年の安寧を祈る営みの中で、干支は年の象徴として用いられ、やがて神社の絵馬、社頭の意匠などにも表されるようになります。
節目に干支を想うということ

神社に並ぶ干支の絵馬や授与品には、そんな一年の無事や実りを願う人々の祈りが込められています。また、自らの生まれ年と干支を重ね、年男・年女として節目を意識する習わしも、時の流れと人とを結びつける文化のひとつです。年末年始に新たな干支を迎え、誕生日に己の生まれ年を振り返ることは、過ぎゆく時と来たる年に心を向ける静かなひとときといえるでしょう。
十二支は、暦としての役割を保ちながら、神道の自然観に寄り添い、暮らしと祈りのあいだに根づいてきました。動物に託された象徴を通して時を感じるこの文化は、今もなお、日本人の時間感覚をやさしく形づくっています。