季節の保存食カレンダー。旬をたのしむ昔ながらの台所仕事

漬物の盛り合わせ

旬の恵みを、ひと手間で保存食に。
昔ながらの台所には、四季折々の食材を無駄なく活かし、長く楽しむための知恵が詰まっています。梅干しやぬか漬け、干し野菜、味噌、果物のジャム――どれも季節を仕込む楽しみと、時間が育てるやさしい味わいがあります。

栄養や健康が気になる今だからこそ、レトルトや市販の総菜だけに頼らず、季節の恵みを暮らしに取り入れてみませんか?塩漬けならとても簡単。まずはひとつの食材からトライしてみましょう。
今回はそんな、常備食・非常食にもぴったりな「昔ながらの保存食」づくりをご紹介いたします。

まずは塩でもむだけ。季節の手仕事、はじめの一歩

即席の浅漬けの盛り合わせ

「保存食」と聞くと、なんだか難しそう…そう思う方も多いかもしれません。
でも、基本はとても簡単なんです。野菜と塩があるだけで、立派なお漬け物になります。

いつも冷蔵庫にあるきゅうりを、切って塩でもんで少し時間をおくだけで、ぱっと食べられる浅漬けのできあがり。塩と一緒に、少量の昆布や鷹の爪を入れると更に風味がよくなります。漬けることで野菜の旨味や栄養を閉じ込めてくれて保存ができます。

浅漬けしやすい野菜

  • きゅうり
  • キャベツ
  • 白菜
  • 大根
  • 人参
  • 茄子
  • 小松菜
  • カブ

難しいことは考えず、まずは「ひとつやってみる」ことからで大丈夫。小さな手仕事の積み重ねが、食材を知り、季節の移ろいを感じるきっかけになります。

気が向いたときに、できることを、できるぶんだけ。
浅漬けができるようになったら次は何しようかな──そんな気持ちで続けていけるように、できそうなものからチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

日本の代表的な保存食

日本の保存食は、季節や行事と結びついた、暮らしの知恵のひとつ。地域の風土に根ざし、旬の恵みを日々の食卓に活かしてきました。そんな中から、特に代表的な保存食をご紹介します。

  • なます(大根と人参)
なますの酢のもの

千切りにした野菜を塩でもんで水気を切ってから甘酢で和えたさっぱりとした酢の物です。箸休めや副菜としても毎日重宝されます。紅白の色合いが縁起よく、お正月料理にも定番。

  • たくあん(大根の漬物)
お新香たくあん

大根を干してから塩で漬け込み、冬の間の保存食として活用できます。日本の家庭では定番の漬物で、ほかの漬物と比べて保存性が高いです。

  • 干ししいたけ

しいたけを干して保存することで、長期間保存が可能になります。旨味が凝縮され、乾燥させることで栄養も香りも豊かに。スライスして干すと短時間で乾燥できます。みそ汁やスープ、煮物に便利。

  • らっきょう漬け
ラッキョウ

新鮮ならっきょうを甘酢や塩で漬け込むことで、長期間保存できるようにしたもの。たくさん漬けられる夏の時季がねらいめ。常備食として毎日の食卓やカレーの付け出しにも、食欲増進や消化を助けます。

  • 梅干し
ごはんのお供に梅干し

塩漬けにした梅を天日干しし、赤じそと共に漬けて作る日本の伝統食。酸味と塩気が特徴で、ごはんのお供やおにぎりの具として親しまれ、クエン酸による疲労回復効果も期待されます。昔ながらの製法による梅干しは、長期保存が可能です。

  • おかず味噌(ごまみそ・山菜味噌・ふき味噌)
おかず味噌

野菜や山菜を味噌でじっくり炒めただけのかんたん保存食です。おにぎりやお茶漬け、豆腐などに付けたり、焼き物の味付けにも使われます。余り野菜でできるので昔からよく作られます。

  • 昆布の佃煮(つくだに)
昆布の佃煮

昆布をみりん醤油で甘辛く煮つめた佃煮も、日本の代表的な保存食。海藻を食べることは健康に良いとされ、栄養が豊富です。しいたけや小魚、貝類、山菜、大豆など、佃煮は色んなバリエーションができます。

  • 干物(ひもの)
魚とイカの干物いろいろ

めざしの他、開きにした魚やイカを干して保存する技術で、特に秋〜冬の時期に多く作られます。鮮度を保ちながら長期間保存できるので、昔から広く食されてきました。

  • 味噌(みそ)
自家製味噌づくり

大豆を発酵させて作る味噌も、保存食の代表格。数ヶ月〜数年保存できるので、手作りしている家庭も多くありました。白みそ、赤みそ、あわせ味噌など様々な種類があり、地域によって異なる風味があります。

  • ぬか漬け
ぬか漬けの漬物

米ぬかを発酵させた「ぬか床」に野菜を漬けて作る、日本の伝統的な漬物です。きゅうりやなす、大根などが定番で、毎日かき混ぜて育てるぬか床は家庭ごとの味が楽しめます。乳酸菌が豊富で、腸内環境を整える効果もあります。

季節ごとの保存食カレンダー

春夏秋冬、それぞれの季節の食材を使った保存方法があります。季節に合わせて仕込むと失敗が少ないですよ。代表的な保存食を月ごとにご紹介。気になる保存食を見つけて作り方を調べてみてください。

春の手仕事(3~5月)

春の食材たけのこ

寒さが和らぎ、山菜や旬の野菜が出回る春は、台所仕事を始めるのにぴったりの季節。山菜のあく抜きや筍の下処理、いちごジャムづくりなど、春の恵みをそのまま閉じ込める保存食づくりが楽しめます。また、味噌の寒仕込みも春先に行う大切な手仕事のひとつ。やさしい春の香りを、瓶や保存容器に詰めて、これからの季節に備えましょう。

食材・手仕事内容保存方法・備考
3月・わらび、ぜんまいの灰汁抜き/塩漬け/乾燥
・たけのこの水煮、塩漬け
・ふき味噌
・いかなごのくぎ煮(西日本/常備食に)
・味噌づくりの寒仕込み
乾燥
塩漬け
瓶詰
4月・山菜(こごみ、うど、うるい等)の塩漬け
・春キャベツの浅漬け
・いちごジャム・コンポート
塩漬け
瓶詰
冷蔵/保存
5月・新しょうがの甘酢漬け(ガリ)
・みょうがの甘酢漬け
・グリーンピースの塩ゆで冷凍
・新ごぼうの味噌漬け
甘酢漬け
冷凍/保存
下ごしらえの準備
ポイント
   □ 山菜のあく抜きは採取後すぐに行い、新鮮さを保つことができます。
   □ 味噌の寒仕込みは気温が低い2〜3月に。ゆっくり発酵で失敗しにくいためです。
   □ 瓶詰めは瓶の煮沸消毒や清潔な環境が保存のコツです。

夏の手仕事(6~8月)

初夏の食材うめ

梅や新しょうが、らっきょうなど、保存食づくりが盛んになる夏。梅シロップや梅干しの仕込みは、毎年楽しみにしている方も多い季節の風物詩です。新しょうがの甘酢漬けやぬか漬け、強い日差しを生かした干し野菜づくりもおすすめ。暑さの中でも、季節の恵みを手仕事に変える時間は、心を落ち着かせてくれる特別なひとときです。

食材・手仕事内容保存方法・備考
6月・梅干しの仕込み(収穫、追熟)
・梅酒、梅シロップ、小梅のカリカリ漬け
・らっきょう漬け
・実山椒の下処理・冷凍保存
塩漬け
酢漬け
冷凍など
7月・梅干しの土用干し(晴天3日間)
・赤紫蘇ジュース
・青じその醤油漬け
・とうもろこしの茹で冷凍
梅干しは天日干し
他は冷蔵/冷凍保存
8月・ドライトマト
・きゅうりのキューちゃん漬け
・なすのからし漬け
・枝豆の塩ゆで冷凍
干し
漬物
冷凍保存
ポイント
   □ 梅仕事は6月上旬から開始し、完熟梅を使うと風味良し。
   □ 夏の保存食はカビ防止に塩分・酢の量を適切に。湿気や高温に注意。
   □ 干し野菜は晴天の日に短時間で干し上げるのが成功の秘訣です。

秋の手仕事(9~11月)

秋の食材渋柿

空気が澄み、食材の傷みにくい冬は、漬物や発酵食品の仕込みにぴったりの季節。大根や白菜を使った本漬け、寒風に当てる干し野菜、そして「寒仕込み」の味噌づくりが代表的です。魚の寒干しや塩引き鮭も、この時期ならではの手仕事。自然の力と昔ながらの知恵を活かしながら、春を待つ台所の準備がはじまります。

食材・手仕事内容保存方法・備考
9月・梨・ぶどうのコンポート
・いちじくジャム
・さつまいもの甘煮保存
・栗の渋皮煮/甘露煮
瓶詰
冷凍/冷蔵
砂糖煮など
10月・干し柿づくり(渋柿)
・鮭といくらの醤油漬け
・きのこのオイル漬け
・秋刀魚の甘露煮
干し
瓶詰
冷蔵/冷凍保存
11月・ゆず味噌/ゆず胡椒
・かぶの千枚漬け
・はやとうりのピクルス
・納豆(年中可)
漬け込み/発酵
冷蔵保存
ポイント
   □ 干し柿は乾燥と風通しの良い場所で吊るし、湿気に注意。
   □ 魚介類は新鮮なうちに下処理・漬け込みし、臭みを防ぎます。
   □ 糖分・塩分を適切に調整して保存性を高めましょう。

冬の手仕事(12~2月)

冬の食材だいこん

空気が澄み、食材の傷みにくい冬は、漬物や発酵食品の仕込みにぴったりの季節。大根や白菜を使った本漬け、寒風に当てる干し野菜、そして「寒仕込み」の味噌づくりが代表的です。魚の寒干しや塩引き鮭も、この時期ならではの手仕事。自然の力と昔ながらの知恵を活かしながら、春を待つ台所の準備がはじまります。

食材・手仕事内容保存方法・備考
12月・金柑の甘煮/はちみつ漬け
・黒豆の甘煮(おせち)
・数の子の塩抜き〜醤油漬け
甘煮
おせち準備の仕込み時期
1月・味噌の寒仕込み
・たくあんの漬け込み
・寒干し大根・切り干し大根
・塩麹づくり・米麹づくり
発酵食品の仕込みが中心
乾燥・常温
2月・甘酒(生麹 or 酒粕)
・醤油麹
・ひしお(もろみ調味料)
発酵調味料の仕込み
常温または冷蔵
ポイント
   □ 寒仕込みの味噌は低温で雑菌を抑え、じっくり発酵させます。
   □ 干し野菜や寒干しは乾燥した冷気のある場所で行いましょう。
   □ おせちの保存食は早めに仕込み、冷蔵・冷凍で管理しましょう。

季節の保存食には、自然に寄り添う暮らしの工夫がたくさん詰まっています。地域の気候や野菜に合わせて工夫された保存食は、土地ごとの味わいそのもの。自家製の味はお母さんの味として、親から子へ、世代を越えて受け継がれてきました。

むずかしく考えず、できることから少しずつ。
自然と向き合う時間が、毎日を少し豊かにしてくれますよ。

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