保存食は、日々の料理に使われる塩・酢・味噌などの調味料を使って、家庭で手軽に作ることができます。
梅干しやらっきょう漬けなど、かつてはどの家庭にもあった定番の常備菜は、現代の食生活を見直す中で「保存食」として再び注目を集めています。
健康志向の今こそ、初心者の方でも気軽に始められる、初夏の代表的な保存食を作ってみませんか。梅干し・らっきょう酢・実山椒の作り方をご紹介します。
昔から家庭で作られてきた保存食

保存食というと、防災用の非常食を思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし、日本には、もっと昔から「常備食」として暮らしに根づいた保存食がたくさんあります。
その代表格ともいえるのが、梅干しです。
梅干しは、家庭の万能薬ともいわれてきた存在です。
疲れたときには疲労回復としてや、食欲がないときにも口にできます。
殺菌・防腐作用があり、お弁当やおにぎりの中心の具として使われることが多いのは、ただのおいしさだけでなく、「守る」力があるからこそなのです。
冷蔵庫がなかった時代、人々は季節に採れた食材を干したり、塩や酢で漬けたりして、自然の力、そして発酵の力をかりて長く保存する知恵を育んできました。
梅干しは、その知恵の詰まった賜物なのです。
基本の調味料

漬物や保存食を作るときに欠かせない「基本の調味料」は、素材の味を引き出し、長期保存に適した仕上がりにするための重要な要素です。
特に、塩・砂糖・酢・醤油・味噌は日本の発酵文化・保存食文化の柱とも言える調味料です。
1. 塩(しお)
役割:脱水作用による保存性向上/雑菌の繁殖を防ぐ/素材の旨味を引き出す
おすすめ:
天日塩や海水塩など、自然塩(粗塩)
2. 砂糖(さとう)
役割:まろやかな甘みを加える/素材の角をとる/発酵や保存の調整に
おすすめ:
きび砂糖(コクと香りがある)
てんさい糖(まろやかで冷えにくい性質)
黒糖(濃厚な風味、佃煮などに)
漬けにはあまり白砂糖(上白糖)を使わず、コクのある甘みの砂糖が向いています。
※甘酢や佃煮、みそ漬けなどに活躍。
3. 酢(す)
役割:酸による殺菌作用/さっぱりした味付け/発色・香り付け
おすすめ:
米酢(純米酢):まろやかな風味とコクがあり、漬物向き
穀物酢:さっぱりした味でらっきょう漬けなどに最適
りんご酢・黒酢などはアレンジ用に
※「純」とつく酢(純米酢・純りんご酢など)は、添加物なしで自然発酵されたもの。
4. 醤油(しょうゆ)
役割:発酵による旨味と香り/味の引き締め/保存性の向上
おすすめ:
本醸造醤油(天然醸造)
昔ながらの製法で作られたもの、天然醸造系ブランドがおすすめ
※短期保存にも向き、色と香りの効果も大きい。
5. 味噌(みそ)
役割:麹の酵素と塩による保存効果/独特の旨味と風味を加える
おすすめ:
無添加の天然醸造味噌(米味噌、麦味噌、豆味噌)
米麹の入った白味噌や赤味噌は、漬物やみそ漬けに風味をプラス
※ナスや大根の味噌漬け、魚や肉の味噌漬けにも。
梅干しの作り方

【材料】
・梅:1kg
・粗塩:200g(梅の重量に対して20%)
【あれば便利】
・保存容器(1.5 ℓ)
・焼酎(アルコール35度以上):少量(梅や容器の消毒用)
・重し:2kg(梅の重さに対して約2倍)
水を入れたペットボトルなど
・天日干し用のざる
お盆や吊り下げネットなど
・竹串や爪楊枝
① 梅を洗って下処理
傷んだ梅を取り除き、やさしく洗います。
竹串で「ヘタ」を取り、水気を拭きとります。
梅に霧吹きで焼酎をかけてもよい。
② 梅を漬ける
容器を熱湯処理するか、焼酎でふき取り消毒します。
塩→梅→塩→梅…の順に交互に重ねます。
梅の上に残った塩をすべてふりかけ、消毒した落とし蓋やラップをして、重しをします。
③ 梅酢が上がる(約1週間)
常温で、直射日光を避けた涼しい場所に置きます。
2〜3日すると、梅から水分が出て「梅酢」が上がってきます。
全体がしっかり梅酢に浸かったら、カビの心配はほぼなくなります。
④土用干し(晴れが3日続く時期に)※7月中旬〜8月上旬
梅雨明け後、晴天が続く時期に梅をザルに並べて天日干しを三日間ほどします。
昼間は干して、夜は梅酢に戻すことでふっくら仕上がります。
完全に乾いたら清潔な保存容器に移し、保存します。
3ヶ月~6か月ほど置き、塩味が薄まり、まろやかな味になった頃がおすすめです。保存期間は1年から数年もつものもあります。
らっきょうの甘酢漬け

シャキシャキとした食感が人気のらっきょうも、初夏が旬。甘酢漬けにすれば日持ちがし、カレーのお供や箸休めに最適です。
【材料(らっきょう1kg分)】
らっきょう(洗い):1kg
リンゴ酢:500ml
塩:30g
鷹の爪:1~2本(お好みで)
【漬け方】
①塩漬け(1日)
らっきょう全体に塩をまぶしてボウルなどに入れ、ラップをして冷蔵庫で1晩置きます。これで水分が出てシャキッと引き締まります。
②煮沸消毒した容器にリンゴ酢を入れ、漬け込む
③漬け込む
冷暗所または冷蔵庫で保存します。
2,3週間後から食べ始めることができます。正しく保存することで、半年から1年ほど保存することができます。
実山椒

【材料】
・実山椒:100g(小房に分かれた状態で)
・塩:少々
【手順】
①枝から外す
実山椒を枝から一粒ずつ外します。
②下ゆで
鍋にたっぷりの湯を沸かし、塩ひとつまみを加え、実山椒を入れて2~5分ほどゆでます。辛みや苦味が好みの強さになるまで味見をして調整します。
③冷水にさらす
ゆであがったらすぐ冷水に取り、2~3時間以上さらしてアクを抜きます。途中で何度か水を替えてください。
④保存
水気をよく切ってから冷凍保存できます。冷凍すれば約1年間保存可能です。
日本には季節に合わせて作れる保存食がたくさんあります
保存食になる食材はどんなものも、少しの手間で長く楽しめる常備菜になります。
旬の食材は栄養も豊富で、体にやさしいのも魅力のひとつです。今年の初夏は、ぜひ保存食を楽しんでみてください。